はじめての書き初め

 

 

一月、新しい年を迎えた幼稚部さん。

今日は黒い服が多いなと思ったら、なんと書き初めに初挑戦です。

お題は「うし」。先生が指文字で「うし」ってなあに?と聞くと、

みんな高速の手話で「牛牛牛牛牛牛牛!」と答えます。

11月の千神祭で、十二支の物語を舞台で演じたので、

牛役だった子は、「僕、前に牛をやったよ!」と得意気です。

 

 

「こういう縦長の四角い紙に、う、しと書くんだよ。」

と、ホワイトボードの見本の上で、先生が手首のスナップをきかせて、

とめやはらいの動きを見せます。

「一枚書いたら、脇にある大きな紙の上に移して、それからまた新しい和紙に書くんだよ。」

と、ここまでの説明をみんなが理解したところで、書道会場に移動します。

 

床一面にブルーシートを敷き、互い違いに距離をとって、

黒い下敷きをブルーシートの上にテープで固定。

これなら下敷きが滑らないし、場所が固定されるので、

子どもたちがついつい接近してしまうことも防げます。

文鎮は、前の日に先生たちが校庭から拾ってきた石です。

和紙の上にちょこんと置かれた姿が、なんだかかわいいです。

 

ここであらためて、墨汁や筆の扱い方を説明します。

描き終えた和紙を床に対して垂直に持って移動してしまうと、

墨が流れてしまうので、慎重に水平に持って移動させる。

筆は墨につけたままにせず、必ず元の位置に戻す。

みんな早く書きたくてウズウズしながらも、

説明を聞き逃すまいと、しっかり先生の手話を見ています。

空中に指で「うし」と書いてイメージトレーニングをする子もいます。

 

それでは、書き初め開始!

真っ白い和紙に、恐る恐る墨をのせる子、動じずさらさら書く子、

おや、途切れ途切れに書き繋いだり、二度書きしている子もいますが、

今日は細かいルールは抜きにして、自分の書を楽しみます。

先生の説明通り、書き終わったら心を落ち着けて、

和紙を両手で水平に持ち、ソロリソロリと運びます。

 

ある程度、みんなが書けたところで、ふたたび先生から説明です。

いまから渡す和紙が最後の一枚であること、

丁寧に美しく書くことを心がけて、書き終わったら片づけに入ること、

書いたばかりの和紙は破れやすいので、作品を踏まないように外の洗い場に移動すること、

筆は墨を床に落とさないよう容器に入れて持ち運ぶこと、

外の洗い場で筆を洗ったら、中に入って手を洗ってお昼ごはんにすること、

昼食後、一番出来がよいものを選んで先生に提出すること、などなど。

 

そうして、書きはじめから最後の片づけまで、

一滴も墨を落とさず、書き初めを終えました。

見ていたこちらは、何のトラブルもなかったことに、正直拍子抜けしましたが、

ろう者にわかりやすい説明スタイルで、

かつ、年齢と理解力に合わせて、適切な情報量と、

的確なタイミングで説明できる手腕が

先生たちにあるからこそ、できる活動なのでしょう。

 

ついついかわいい子どもたちに目が行きがちですが、

先生たちに注目して動画をみるのも、おもしろいかもしれません。